生涯医療費と歯の関係
歯の健康が「財布の健康」にもつながる理由
皆さんは、歯のケアが単に「虫歯や歯周病を防ぐ」だけではなく、生涯にわたる医療費全体を左右する重要な要素だとご存知でしょうか? 実は、お口の健康は全身の健康と密接に結びついており、歯を失ったり歯周病が進行したりすると、心臓病や糖尿病、認知症などの全身疾患のリスクが高まり、結果として入院や通院にかかる費用が増大してしまうのです。
厚生労働省の調査でも・・・
厚生労働省の調査でも、残存歯(自分の歯が残っている本数)が多い人は、糖尿病や心疾患、認知症の発症率が低く、それに伴う医療費が抑えられる傾向が示されています。 たとえば、定期的に歯科医院でメンテナンスをしている人と、そうでない人の生涯を想像してみてください。予防を怠ると、将来的に数百万円単位の医療費差が生じる可能性があるのです。70代で自分の歯が20本以上残っている人と、0~4本しか残っていない人を比較すると、生涯医療費に数百万円以上の差が出る可能性があると言われています。 これは、歯が多いほどしっかり噛めて栄養摂取が良くなり、全身の健康が保たれやすいからです。一方、歯が少ないと食事の偏りや嚥下(飲み込み)の問題が生じ、栄養不良や誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。厚生労働省のデータでも、残存歯が多いグループは全身疾患の発症率が低く、生涯医療費が全体的に下がる傾向が確認されています。 つまり、歯を「守る」投資が、将来的な「節約」につながるのです。
歯周病が「全身の病気の引き金」に? 関連疾患と医療費の増加
歯周病は、ただの「お口の病気」ではなく、全身に悪影響を及ぼす「サイレントキラー」と呼ばれています。歯周病菌が血流に乗って体中に広がり、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、認知症、誤嚥性肺炎などのリスクを高めるのです。 たとえば、重度の歯周病患者は、軽度の人に比べて糖尿病の医療費が約1.3倍、虚血性心疾患(心筋梗塞など)の医療費が約1.4倍になるというデータがあります。神奈川歯科大学の研究では、歯周病による歯喪失で転倒リスクが2.5倍、認知症リスクが1.9倍になると指摘されており、これらが現実化すれば入院やリハビリでさらに費用がかさみます。 歯周病は入院や長期治療を必要とする病気の引き金になるため、予防が生涯医療費の大幅削減につながる側面もあるのです。
定期検診で医療費を節約! 実際の調査データから
予防歯科の効果を裏付ける強力なエビデンスとして、トヨタ関連部品健康保険組合の調査(対象:組合員5万2600人)があります。この調査では、定期的に歯のメンテナンスを受けているグループの生涯医療費が、一般平均の2,300万円を下回ることが明らかになりました。3割負担の場合の自己負担額は、一般平均で690万円ですが、検診グループはこれより低く抑えられます。特に、48歳までは検診費用で一時的に高くなるものの、49歳以降は安くなり、65歳時点では一般平均の35万円に対し、検診グループは20万円以下で、15万円の差が生じます。
高齢者向けの最新研究 ~ 口腔健康が医療費を直接左右
新潟市の高齢者コホート研究(対象:80歳294人、追跡期間33ヶ月)では、歯周病の有病者や歯周組織の炎症が強いグループで、総医療費が有意に高いことが示されました。具体的に、歯周病有病者の月平均医療費は42,975円に対し、無病者は28,123円。差額は約1.5倍で、特に糖尿病、心血管疾患、慢性腎臓病関連の費用が増加します。 また、歯の喪失が多いグループでは脳梗塞や肺炎の費用も高くなる傾向が見られました。
今から始める予防で、健やかで経済的な未来を
これらのエビデンスからわかるように、歯の健康を守ることは、単なる「美しさ」や「快適さ」の問題ではなく、生涯医療費を数百万円単位で節約し、健康寿命を延ばす賢い選択です。歯周病予防や定期メインテナンスを習慣化すれば、全身疾患のリスクを減らし、結果として入院や通院の負担を軽減できます。当院では、担当歯科衛生士制を導入し、一人ひとりのお口の状態に合わせた予防プランを提供しています。まずはお気軽にご相談ください。あなたの歯が、未来の財布を守る第一歩になるはずです。
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